【見抜く力】「巧言令色、鮮なし仁」とは?言葉が巧みな人ほど信用できない理由を論語に学ぶ

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あなたの周りに、口がうまく、いつも愛想の良い人はいませんか?一見すると魅力的で付き合いやすい人に思えるかもしれません。しかし、孔子は2500年以上も前に、そうした人物に対して警鐘を鳴らしていました。

それが、論語の学而篇(がくじへん)に出てくる有名な一節、**「巧言令色、鮮なし仁(こうげんれいしょく、すくなしじん)」**です。

今回は、この言葉の意味を深掘りし、現代社会を生きる私たちが人を見抜き、また自らが誠実であるために、何を学ぶべきかを探っていきましょう。

格言の解説

  • 書き下し文: 巧言令色、鮮(すく)なし仁(じん)。
  • 現代語訳: 言葉を飾り、顔つきを良くして人に気に入られようとする者は、仁の心が欠けていることが少なくない。

一つ一つの言葉を分解してみましょう。

  • 巧言(こうげん): 口先がうまく、言葉を巧みに飾ること。相手が喜ぶような、中身の伴わないお世辞や美辞麗句を指します。
  • 令色(れいしょく): 人に媚びへつらうような、とりつくろった顔つきや表情をしていたり、自分を必要以上にきらびやかに見せようと着飾っていること。相手の顔色をうかがい、気に入られようとする愛想笑いなどがこれにあたります。
  • 仁(じん): 論語において最も重要な徳目とされる考え方で、他者への誠実な思いやりや、真心、深い愛情を意味します。

つまり孔子は、**「口先ばかりが達者で、表情をとりつくろって人に取り入ろうとする人物には、誠実な思いやりの心(=仁)が少ない」**と断言しているのです。

なぜ「仁」が少ないのか?

なぜ、言葉巧みで愛想の良い人には「仁」が少ないのでしょうか。

それは、彼らの関心が**「相手のため」ではなく「自分が相手からどう見られるか」**という点に集中しているからです。彼らの目的は、相手を思いやることではなく、言葉や表情を道具として使い、自分の利益や評価を高めることです。

その心の内には、誠実さよりも自己中心的な計算が働いています。そのため、その場では耳障りの良いことを言っても、行動が伴わなかったり、陰では全く違うことを言ったりするのです。真心からの言葉ではないため、薄っぺらく、信頼に値しないのです。

現代社会にあふれる「巧言令色」

この教えは、現代社会においてこそ、より重要性を増していると言えるでしょう。

  • ビジネスシーン: 実績や実力が伴わないのに、口先だけでうまく立ち回ろうとする人。その場しのぎの約束をする営業マン。
  • SNSの世界: 「いいね」やフォロワーを集めるために、うわべだけの綺麗さや、誇張した表現を必要以上に使うインフルエンサー。
  • 日常生活: 自分の非を認めず、言い訳ばかりする人。誰にでもいい顔をして、陰で悪口を言う人。

心当たりはないでしょうか?私たちは日々、多くの「巧言令色」に触れている可能性があります。

誠実さを見抜き、自らを律する

では、私たちはどうすれば良いのでしょうか。

  1. 言葉と行動が一致しているかを見る: その人が言っていることと、実際に行っていることに矛盾がないか、注意深く観察しましょう。口先だけでなく、行動こそがその人の本質を表します。
  2. 自分への評価を気にしすぎない: 他人からどう見られるかばかりを気にしていると、自分自身も「令色」に陥りやすくなります。大切なのは、誠実な心で相手と向き合うことです。
  3. 素朴でも真心のある言葉を大切にする: 口下手でも、一生懸命に伝えようとしてくれる人の言葉には、真心がこもっています。飾られた言葉よりも、質実剛健な言葉の価値を再認識しましょう。

まとめ

「巧言令色、鮮なし仁」。この言葉は、人間関係の本質を見抜くための、時代を超えた指標です。

言葉が巧みで愛想が良いことは、それ自体が悪いわけではありません。しかし、その根底に**真心や誠実さ(仁)**がなければ、それはただの空虚な技術に過ぎません。

他人の言葉に惑わされず、また自らが「巧言令色」に陥らないよう、常に「仁」の心を忘れないようにしたいものです。あなたの周りの人間関係を、そしてあなた自身の言動を、この論語の言葉を鏡として一度見つめ直してみてはいかがでしょうか。

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