日々忙しく過ごしていると、つい些細なことでイライラしたり、不安に苛まれたりすることはありませんか?そんな現代人にこそ、2500年以上も読み継がれてきた孔子の言葉『論語』が、心の持ちようを教えてくれます。
今回は、論語の述而(じゅつじ)第七にある**「君子は坦(たん)として蕩蕩(とうとう)たり。小人は長(つね)に戚戚(せきせき)たり。」**という言葉をご紹介します。この短い言葉の中に、穏やかで豊かな人生を送るためのヒントが隠されています。
格言の解説
- 書き下し文: 君子(くんし)は坦(たん)として蕩蕩(とうとう)たり。小人(しょうじん)は長(つね)に戚戚(せきせき)たり。
- 現代語訳: 君子(人格者)は心が平らで広々としており、ゆったりと落ち着いている。一方、小人(徳のない人)はいつも心配事を抱え、くよくよと心を痛めている。
ここで言う「君子」とは、単に身分が高い人という意味ではなく、人格や道徳性に優れた理想的な人物像を指します。「小人」はその逆で、目先の利益にとらわれ、徳性に欠ける人物を指します。
この言葉が示すのは、心の状態がその人のあり方を左右するということです。
- 君子の「坦蕩蕩」たる所以:
- 公平無私な心: 物事をありのままに受け止め、私利私欲に走らないため、心は常に平穏です。
- 広い視野: 目先のことに一喜一憂せず、長期的な視点で物事を捉えることができます。
- 自信と余裕: 自分の信念に基づいて行動するため、心にゆとりがあります。
- 小人の「長戚戚」たる所以:
- 利己的な心: 常に自分の損得勘定で動くため、些細なことで不安になったり、他人を妬んだりします。
- 狭い視野: 目先の利益や評価に囚われ、心が休まる時がありません。
- 不安と劣等感: 他人と比較しては落ち込み、常に何かを恐れています。
現代に活かす「坦蕩蕩」の精神
この教えは、現代社会を生きる私たちにとっても非常に示唆に富んでいます。情報過多で変化の激しい現代において、心の平穏を保つことは容易ではありません。しかし、だからこそ「坦蕩蕩」の精神が重要になるのです。
では、どうすれば君子のように「坦蕩蕩」たる心境に至れるのでしょうか?
- 物事をありのままに受け入れる訓練をする: 予期せぬ出来事や困難に直面したとき、感情的に反応するのではなく、まずは事実を冷静に受け止める努力をしましょう。
- 長期的な視点を持つ: 目先の成功や失敗に囚われず、自分の人生全体にとって何が大切かを見据えることが重要です。
- 自分なりの価値観を育む: 他人の評価や社会の風潮に流されず、自分が本当に大切にしたいもの、正しいと信じるものを見つけましょう。
- 小さなことに感謝する: 日常の中に潜む小さな幸せを見つけ、感謝する習慣は、心を豊かにし、穏やかさをもたらします。
- 内省の時間を持つ: 忙しい日々の中でも、少しの時間でも良いので自分自身と向き合い、心の声に耳を傾ける時間を作りましょう。
もちろん、常に「坦蕩蕩」としていることは難しいかもしれません。人間である以上、時には悩み、不安になることもあるでしょう。大切なのは、そのような状態に気づき、「小人の長戚戚」に陥らないよう、意識して心の状態を整えようとすることです。
まとめ
「君子は坦蕩蕩、小人は長戚戚」。この言葉は、私たちの心のあり方一つで、日々の過ごし方、そして人生そのものの質が大きく変わることを教えてくれます。
常に心を広く、おおらかに保ち、小さなことにくよくよせず、ゆったりと構えて生きていく。そんな「君子」の生き方を目指すことで、より穏やかで充実した毎日を送ることができるのではないでしょうか。
あなたの心は今、「坦蕩蕩」ですか?それとも「長戚戚」に傾いていますか?この機会に、ご自身の心の状態を見つめ直してみてはいかがでしょうか。